面白かった本

この1年で読んだ本の中で面白かった10冊。

1.自省録 マルクス・アウレリウス
  恐らく今後も見直す機会があると思う。プラトンの哲人政治の思想を、歴史上唯一体現した人であり、ストア派の実践者の記録。日記のようなメモなので、内容がオーガナイズされているわけではないが、それだけになおさらアウレリウスの苦悩と熱い魂が伝わってくる。名言多数。神谷美恵子氏の翻訳も素晴らしい。同じ日記ということで、自分がずっと昔に書いたブログを見返したところ、下ネタばかり書いてあり、アウレリウスとのあまりの徳の違いに愕然とする。

”君が心を傾けるべきもっとも手近な座右の銘のうちに、つぎの二つのものを用意するがよい。その一つは、事物は魂に触れることなく外側に静かに立っており、わずらわしいのはただ内心の主観からくるものにすぎないということ。もう一つは、すべて君の見るところのものは瞬く間に変化して存在しなくなるであろうということ。”

”君の頭の鋭さは人が感心しうるほどのものではない。よろしい。しかし「私は生まれつきそんな才能を持ち合せていない」と君がいうわけにいかないものがほかに沢山ある。それを発揮せよ、なぜならそれはみな君次第なのだから、たとえば誠実、謹厳、忍苦、享楽的でないこと、運命にたいして呟かぬこと、寡欲、親切、自由、単純、真面目、高邁な精神。今すでに君がどれだけ沢山の徳を発揮しうるかを自覚しないのか。こういう徳に関しては生まれつきそういう能力を持っていないとか、適していないとかいい逃れするわけにはいかないのだ。”

”「なんて私は運が悪いんだろう、こんな目にあうとは!」 否、その反対だ、むしろ「なんて私は運がいいのだろう。なぜならばこんなことに出会っても、私はなお悲しみもせず、現在におしつぶされもせず、未来を恐れもしていない」である。”

2.デモクラシーの理想と現実 マッキンダー
  著者はハートランドの理論で有名な地政学者(地理学者)であるが、これまでの歴史を踏まえ、いかに地政学的な要素が国の興隆に関わってきたかを論理的に述べる。学者的で筋の通った切れのある文章で進むが、同時に政治家的でもある。ヨーロッパと遊牧民族の長い争いや、アラビア半島の地政学的重要性などについて、この本を読んで非常に得るところがあった。

3.君たちはどう生きるか 吉野源三郎
  おそらく、本書は中高生向けとして書かれた本だと思うが、大学3-4年生とか1-2年目の社会人が読むと非常に得るものがあるのではないかと邪推する。久しぶりに本を読んで泣けた。小説という形で、人としてどう生きるかを非常に誠実に書いた名作。

4.道徳感情論 アダム・スミス
  アダムスミスは経済学の祖として「国富論」がよく知られているが、本書では、人間を非常に深く考察している。スミスの議論の出発点は、人間には「共感」の感情が備わっており、善悪の感情があり、これは哲学に教えられることがなくとも、世間(市場)で適用されるというもの。人間は自分が一番大事であるという本能があるにも関わらず、処罰されないように憤りを抑えるような行動をするし、利己的でありながら利他的な行動を優先する。それは気高さとか、卓越性への愛、といった、自己愛を超える感情に由来する。このようなスミスの人間に対する深い洞察が、「神の見えざる手」で有名な市場原理の考えを体系化したということが非常によく理解できた。

5.古事記 太安万侶
  712年に書かれた日本最古の歴史書で、前から読もうと思っていたところようやく読むことができた。小学館の出版は、原文、訓読分、翻訳、解説とそろって読めるところがとても良い。恥ずかしながら、古事記がすべて漢文(変体漢文といった方が適切か)で書かれていることを初めて知った。硬い内容と思っていたが、読み物としてかなり面白い。天照大神が天の岩屋に隠れた、という話は有名だが、その理由も書いてある。スサノオノミコトが天が原(天の世界)で大暴れして、馬を逆さにして落として、それを見て驚いた女性が、自分の陰部を刺して死んだ。それを見て恐ろしくなって、天の岩屋に隠れたとのことだ。こんなものを国家的書物として取り扱っていたのだから、笑える。

6.昭和史 半藤一利
  戦争は、今の世代は直接体験することはできないが、どんな出来事があり、人々はどんな感情でその場にいたのか、ということを勉強する努力は怠るべきではないと思う。本書は、著者の若干の価値観は入っているが、基本的には様々なソースを用いて事実を忠実に伝えており、また語り口調が非常に分かりやすくて面白い。

7.種の起源 チャールズ・ダーウィン
  超有名だが、本書を読んだことがある人は意外と少ないのではないかと予想する。実際、種の起源は学術書というよりは、一般の人でもわかるようにとの目的で書かれたものであったので、比較的読みやすい。本書で非常に勉強になったのは、分かっていること分かっていないことをしっかりと峻別する態度、そして、膨大な実験や自分の経験から、一部推論に頼りつつも、感情に惑わされず客観的かつ論理的に結論を導いているところだ。キリスト教的な創造説批判への強い意志と、確固たる自説への自信が伺える。レベルの違いを見せつけられる。

8.生物学的文明論 本川達雄
  生態系・環境問題について論じる本でもあるが、自分として印象に残ったのは、「生き物は円柱形。」ということと、「ゾウとネズミの寿命は違うが、死ぬまでの累計心拍数は同じ。」ということだ。著者は、「生き物は円柱形」という名曲を生み出しており、面白すぎる。今年聴いた中で、間違いなく一番笑った楽曲。

9.西洋音楽史 岡田曉夫
  これまで読んだ中で、最も面白いクラシック入門本だった。グレゴリオ聖歌からの長い西洋音楽史の概略が分かる。自分は音楽はまったくの素人だが、ベートーベン、ブラームス、マーラーらへんの形而上学的な姿勢を見ると、やっぱり音楽は芸術なんだな、と感じる。

10.本の使い方 出口治明
  著者は自分が尊敬している方なのでバイアスも入っているだろうが、これまで読んだ読書論系の本の中では最も腑に落ちた。数字・ファクト・ロジックの重要性が書いてある。読書とはこの人のように読みたいものだ、と思った。この本を読んで以降、間違いなく古典を読む量が増えた。

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面白かった本」への2件のフィードバック

  1. YT

    こんにちは

    現在、TOEFLを勉強中の大学生です。
    ネットサーフィンしていたら、このサイトにたどり着きました。とても参考にさせてもらっています。
    私はTOEFLを勉強し始めてからだいぶたつのですが、伸び悩んでいます。
    ほとんど独学でやっていて、色々な方の勉強法を見て計画を立てているのですが、その計画が正しいのかどうかわかりません。どうか一度メールで相談できないでしょうか。

    よろしくお願いします。

    返信
    1. guko 投稿作成者

      YTさん
      ご連絡ありがとうございます。
      別途個別にメールを送りますので、ご質問等あればそのメールにご返信ください。

      返信

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