英語を学ぶことの効用②(原典の確認)

自分が英語を勉強してよかったと思うことの一つに、「原典に直接当たることへのストレスの軽減」がある。

いまでも、英語は苦手意識を強く持っているものの、英語を勉強してから、文献・ウェブ・本などで英文を読むストレスが格段に軽減された。

この利点は、つまるところ、「ある情報について、自分の頭でその情報の価値を判断できる」ことであろうと思う。

例えば、最近、日本の多くの新聞(例えば読売新聞)で、

「日本の健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)が、188か国中、1位だった」

という記事が出ている。

これ自体は喜ばしいことだ。どの記事も書いていることは同じで主な論点は、

・出典が、Lancet(ランセット)という英国で著名な医学雑誌であること

・日本の2014年の健康寿命は、男性71・11歳、女性75・56歳で、男女ともトップだったこと

のようだ。基本的にはプラスのことしか書いていない。

しかし、試しに健康寿命を英語で検索しても、ほとんどそのようなニュース(日本が世界一だったこと)は出てこない。つまり、世界的には、日本が世界一であることはそれほど大きな話題にはなっていないようだ。

ここで、Lancetのサイトにアクセスすると、原典(※)の全文が見られる。原文は40数ページの論文で、論文の最初のページにあるサマリーには、特に日本のことは言及されていない。188か国の健康状態を統一した方法で調査し、1990年から2013年までの間に、世界的に平均寿命や健康寿命が延びていることがわかった、という喜ばしい記載は書かれている。(世界の平均寿命は、13年で6.2年(65.3歳→71.5歳)、健康寿命は5.4歳(56.9歳→62.3歳)も増加しているとのことだ。)

しかし、サマリーの部分を読んでいて、自分が気になったのは、むしろ次の部分だった。

. In most country-specific estimates, the increase in life expectancy was greater than that in HALE(注:健康寿命のこと).

つまり、ほとんどの国では、平均寿命の伸びの方が健康寿命の伸びよりも大きい。

日本はどうだったか。原データを見る。男女とも、1990年から2013年まで平均寿命も健康寿命も延びた。しかし、平均寿命の伸びの方が健康寿命の伸びよりも約1年長い。これは、言い換えれば、日常生活が制限されるような健康状態の悪化が生じてから、死ぬまでの期間が1990年当時より1年伸びたことを意味する。

健康寿命自体が伸びているのだから、それでも望ましい、という意見もあるだろう。

しかし、本来的には、平均寿命の伸びを健康寿命の伸びが上回ることが、真に自立した幸福な生活といえるだろう。寿命は伸びたが、健康でなく苦しみ続けて生活する期間が長くなったとすれば、けっこう辛い。このように考えていけば、以上の情報は、必ずしも喜ばしい一面だけでなく、世界的に解決していかなければならない課題を浮き彫りにしているともいえる。(もちろん、その前に「健康寿命」とは何か、どのように調査するのか、という点についても確認することは必要と言えるが)

こうしたことは、新聞のベタ記事を読んでいるだけでは自分の問題意識として持つことができないし、たぶん英語を勉強していなければ、そもそもランセットの記事を読んでみる気も起きなかったに違いない。

以上は単なる一例で、原典が英語のものは、すべて同じように、直接原典を確認し、自分の頭で情報を理解することができる。この点、英語を勉強することの一つの利点である気がする。

※ Christopher J L Murray (2015) Global, regional, and national disability-adjusted life years (DALYs) for 306 diseases and injuries and healthy life expectancy (HALE) for 188 countries, 1990–2013: quantifying the epidemiological transition

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中